小学生の吃音支援|多面的な評価と支援がカギ
「小学生になっても吃音が続く…」
「最近“話したがらない”ことが増えた…」
そんなとき、家庭でできる対応から学校・専門機関の支援まで、保護者の方が知っておくべきポイントと対応を、言語聴覚士が解説します。
小学生の吃音は“変化する吃音”
吃音は幼児期に発症することが多く、多くの子は成長とともに軽快します。しかし、小学校入学後も吃音が続くお子さんもいます。学齢期になると、話すことに対する自覚が高まり、吃音が心理的な影響を及ぼしやすくなるのが特徴です。
- 読み上げや発表で詰まりやすい
- 話す前にためらうようになる
- 友だちとの会話を避ける
- 家では饒舌なのに学校では無口
こうした行動の背景には、**「吃音がばれたくない」「またどもったらどうしよう」**という気持ちがあることも少なくありません。
ガイドラインがないからこそ求められる「多面的な支援」
幼児期の吃音には『幼児吃音臨床ガイドライン2021』がありますが、小学生向けの全国的なガイドラインは現時点では存在していません。その理由は、学齢期の吃音が非常に多様であり、吃音の頻度や程度以上に、本人の意識や対人不安、回避行動などが問題となることが多いためです。
そのため、次のような複数の視点から子どもの様子を把握し、支援を組み立てる必要があります。
- 吃音症状(繰り返し、引き伸ばし、詰まりなど)
- 話すことへの不安や恥ずかしさ
- 友人関係や学校生活への影響
- 家庭・学校の協力体制
- 子どもの性格傾向(慎重さ、感情コントロールなど)
学校での支援|「通級による指導(ことばの教室)」
吃音のある子どもが、通常学級に在籍しながら支援を受けられる制度として注目されているのが、**「通級による指導(ことばの教室)」**です。
通級ではこんな支援が行われます:
- ゆっくり話す練習や、楽などもり方の指導
- 吃音への不安をやわらげる心理教育
- 自己肯定感やコミュニケーション力の育成
- 落ち着いて話せる空間の提供
週回、個別または少人数での支援が行われ、多くの自治体で費用負担はありません。
通級のメリットと限界:
✅ メリット:
- 学校内で受けられるため、継続しやすい
- 学校全体への配慮がしやすく、担任との連携も可能
- 本人・保護者・学級担任をつなぐコーディネータになってもらえる
- 学年に応じた心理・態度面への指導を継続的に受けられる
⚠️ 注意点:
- 言語聴覚士が常駐していない場合が多い
- 自校にない場合は保護者の送迎が必要
- 症状への直接的な介入(訓練)は行なっていないところも多い
- 高度な専門療法(例:Lidcombe Program)は対応外
※「もっと専門的な評価をしてほしい」「訓練内容を相談したい」場合には、医療機関や専門相談室との併用がおすすめです。
小学校低学年では「Lidcombe Program」が有効なことも
**リッカム・プログラム(Lidcombe Program)**は、オーストラリア発の吃音への行動療法で、特に幼児や小学校低学年(8歳程度まで)に効果があるとされています。
このプログラムでは、以下のようなアプローチをとります:
- 家庭で「練習タイム」を設けて、子どものスムーズな発話を褒める
- 吃音が出たときには、やわらかく指摘して再発話を促す
- 保護者が日々のサポートを行い、専門家が週1回アドバイス
本人の性格や家庭環境によっては向き不向きがあるため、事前の評価が重要です。
言語訓練+心理的サポートの両輪が大切
吃音に対する支援は、話し方の訓練だけでは不十分なことがあります。「話すことへの不安」や「どもることへの恐怖」を和らげることも大切な支援の一部です。
話し方を整える支援(言語訓練):
- 流暢性形成法:ゆっくり話す、軟起声(※やさしく声を出す発声法)、軽い構音接触(※発音時の力を抜く)など
- 吃音緩和法:詰まったときに楽に話し直す技術(例:取り消し法、引き抜き法)
心のサポート(簡易的な認知行動療法):
- 「どもっても伝えられた」経験を重ねる
- 吃音が出ても気にしすぎない思考パターンを育てる
- 保護者との安心できる会話で、話すことへの信頼感を取り戻す
専門家と連携することで安心感を
吃音があっても、「どもっても大丈夫」「自分の言いたいことは伝えられる」という気持ちを育てることが、小学生期の支援では何より大切です。
学校・家庭・専門家が連携することで、子どもの言葉の力と心の土台を育てていくことができます。
オンラインでの専門的支援も可能です
当相談室「オンライン吃音相談」では、小学生の吃音に精通した言語聴覚士が複数在籍しており、小学生へのリッカムプログラム対応も積極的に行なっております。通級との併用、学校との情報共有も可能です。
まとめ
✅ 小学生の吃音は、本人の意識や対人関係が影響しやすい
✅ ガイドラインはないが、多面的な支援が必要
✅ 学校では「ことばの教室(通級)」が有効な選択肢
✅ 低学年ならリッカム・プログラムが適応可能
✅ 話し方と心理面の両方を支える支援が効果的

